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『64 ‐ロクヨン‐ 前編』昭和64年の相関図は頭に入れておくといいかも

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64-ロクヨン- 前編

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監督: 瀬々敬久
キャスト: 佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、瑛太、三浦友和、永瀬正敏、吉岡秀隆、仲村トオル、椎名桔平、滝藤賢一、奥田瑛二、夏川結衣、窪田正孝、緒形直人、坂口健太郎、筒井道隆、鶴田真由、赤井英和、菅田俊、烏丸せつこ、小澤征悦、金井勇太、芳根京子、菅原大吉、柄本佑
公開: 2016年5月7日 観賞: 2016年4月22日(試写会)


タイムリーなのかこの映画が公開されるからなのか、先日、某まとめサイトの事がちょっと話題になっていて。

「昭和64年」というものが存在していたらしいです。興味深かったので調べてみました。って、ええぇぇ……。汗2.gif

で、でもまぁ…よくよく考えたら平成元年生まれの人たちがもうアラサーなんだよね。昭和は遠くなりにけり…。

 

◆あらすじ
わずか7日で終わった昭和64年。その年に起きた少女誘拐殺人事件、“ロクヨン”から14年が経過し、未解決のまま時効が近づいていた。そのロクヨンの捜査に携っていた警務部秘書課広報室の広報官・三上義信(佐藤浩市)は、記者クラブとの不和、刑事部と警務部のあつれき、ロクヨンを模倣したような誘拐事件に直面し……。(シネマトゥデイより引用)

 

日本中の刑事役者が集まったよ!って感じのすごい県警(笑)

原作は横山秀夫氏による同名小説。

原作が同じだから当たり前だが、昨年連続放映されていたNHKドラマとストーリーだけではなく印象もほぼ同じ。つまりあの秀作ドラマと同じくらいこっちもイイ。 

【64(ロクヨン)】土曜ドラマ 第1話 感想 【 ドラマ@見取り八段・実0段 】


前半に関しては特にサスペンスというよりも警察内部の人間ドラマである。

誘拐事件がどう起きるかとか犯人は誰なのかなど、そういう部分を見るサスペンスではないので、謎解き気分で観に行くと恐らく肩透かしを食らう。

どちらかというと、「警察」という組織を描いた社会派ドラマ。

上からも外からも無茶振りされ、家庭にも問題を抱える中で精いっぱい誠実に生きようとする主人公たちの仕事に頭が下がる思い。見ていて胃が痛くなる感覚もドラマと同じだ。

 こういう、押しくらまんじゅう的なもん『クライマーズ・ハイ』でも見た(笑)

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少女の遺体映像には胸が詰まる。

ちょうど、とある事件が起こる所で前編を切っているので後半への期待は繋がる。

ただ、本当に演出もNHKのドラマと同じような印象なので…ドラマ視聴済みの身としては映画版のキャストを見る、といった見方になってしまったのは事実。

もう少し、ドラマ終了から映画公開までの間が欲しかった。(局が違うので言っても仕方ないけど)

主人公は、もう比較するという事もなく、浩市さまは浩市さまなので…。個人的にはやはり少女の父である雨宮さんに注目したわ。

ドラマ版の段田安則は誰がやっても超えられないだろうと放送当時から言われていたので。でも、永瀬さんもすごく良かった。焦燥し苦悩する父の表情に魅せられた。
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あとは、東洋新聞の秋川。これは、ドラマ版では永山絢斗が、劇場版では瑛太が演じている。つまり、兄弟対決。笑.gif

で、瑛太ってやはりさすがだな~と、思ったのだった。
ドラマ版の時には感じなかった秋川のウザさや、周りにも実はウザいと思われているところや、何だかんだ言ってもお人好しなところも、表情や声の抑揚だけで伝わる演技の素晴らしさ。面白いキャラなんだなと映画版のおかげで初めて思えた。
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非常に重厚な作品だが、各回1時間弱の連続ドラマ版の時でさえ言われていた登場人物の位置づけが解りづらいといった部分が2時間の映画ではどうだろう。

観た人が頭の中で昭和64年当時の人物の位置と「現在」の位置の相関図を描けるだろうか、という事はちょっと心配になる。
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観に行かれる方は、ザっとした相関図は頭に入れておいた方がいいかも。

 

ザっとした簡単相関図

※昭和64年時点 追跡班

三上(佐藤浩市さま)現在は広報室長

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望月(赤井英和) 現在退職

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松岡(三浦友和)現在捜査一課長

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※昭和64年時点 自宅班

漆原 (菅田俊)現在所轄の所長

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幸田(吉岡秀隆)←重要人物

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柿沼 ( 筒井道隆)現在捜査一課

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日吉(窪田正孝)現在引きこもり

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とりあえず、事件に関してはこの人たちだけ押さえておけば前篇はOK(たぶん汗.gif)

では。面倒くさいしがらみと建前と権威主義ばかりの男たちの世界を楽しんで。

事件は謎を残して後編へ期待。
後編の公開は6月11日。

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雨宮さんは昭和64年のあの7日間に取り残されている。

予告でも何度も聞いたこのセリフ。

みんな自分の立場や警察の立場ばかり考えていて雨宮さんのことなんか忘れている。
それは「昭和64年」という、日本中がバタバタしていた中で起きた事件が忘れられるのと同じだった。

雨宮さんの時間と立場はいつも置いてけぼりなのだ。

翔子ちゃんの無念。それは三上すら忘れていたことだった。
人間はその立場に立たなければ他人を理解できない。

今、娘を失う辛さを思い知ったからこそ三上は雨宮さんに寄り添える。

実は「ここ」が後編でも重要なことで …。

この物語はそういう物語なのね。その立場に立って考えるということ。

当方はストーリーの先も知ってしまっている身なので。ここは黙って後編を待つ。

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『カルテル・ランド』メキシコ麻薬戦争の澱

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カルテル・ランド

~ CARTEL LAND ~ 

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監督: マシュー・ハイネマン
上映館:  シアター・イメージフォーラム他 

公開: 2016年5月7日  観賞: 2016年5月2日(試写会)


どんなにそれが悪いことだと解っていても、抵抗したら家族もろとも首を切られて街中に曝されるのだとしたら…そんな戦争に参加できる

国ごと犯罪に取り込まれている。力のない者が上に立つことは罪だ。

◆あらすじ
メキシコ中西部ミチョアカン州では麻薬カルテル“テンプル騎士団”の抗争が激化し、市民を巻き添えにした犯罪や殺し合いが続いていた。堕落した政府や警察が頼りにならず、内科医ドクター・ホセ・ミレレスは市民たちと自警団を組織する。彼の勇気ある行動に同調した人々が各地で武装蜂起し、ギャングたちを追い込んでいくが……。(シネマトゥデイより引用)

 


第88回アカデミー長編ドキュメンタリー賞ノミネート作品。

メキシコにおける麻薬カルテルと自警団の戦争を描いたドキュメント。
ドキュメンタリーなのでネタバレも何もないわけで、実際に起きている事象については書いてしまうのでご了承ください。

本当に実際の映像なんだろうかどうやって撮ってるのと思うような衝撃映像が連発。

カルテル戦争に関する話はニュースなどで解っているつもりではいたが、実際に目にする残虐映像の数々には目を覆う。

どうしてそんな部分から切断するのだろう…というような部分から切られた遺体の映像も出てくる。そこは見る前から覚悟が必要かと。


メキシコ麻薬戦争の根は深く、2000年代の初めの方から現在に至るまで麻薬組織同士の争いに巻き込まれて殺害される人は後を絶たない。

作品内でも描かれるが、その「殺害」方法や遺体の処理は容赦ない。メキシコの独特な宗教観がそこに関わっているのかどうかはよく解らない。

政治は軍は警察は何やってるんだという話になり、当然「自警団」という物が立ち上がる。

どんな世界にだって自分たちで何とかしなければ、という正義感の持ち主はいるわけである。この作品は、その自警団を描いた話。


幕末の日本と似ている感覚もあるかも知れない。と、ちょっと思った。

法が充分機能せず、自分たちが守るのだと立ち上がってみたものの組織が大きくなっていくと統制が取れず…

気が付いたら舵の方向が違っていた。

組織の理想を維持すること、そして権力に抗うことの難しさよ…。

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権力はいとも容易く正義を取り込む。では、どうするか。

力を力で制そうとする限り何も変わらないと思うの。

この試写会のトークゲストに『ゆきゆきて、神軍』の原一男監督がいらしていて、このメキシコカルテルの現状を水俣病やアスベスト裁判に被せ、政府ぐるみで真実を隠蔽する恐さや武器を持ってでももっと戦うべきというような話をされていたのだが、うん、ちょっと違うかなという気もしたのだった。ごめんなさい。汗.gif

だって、メキシコではちゃんと戦おうとしている政治家やジャーナリストたちも一定数で出てきているのである。

そして、どうなったか。みんな惨殺された。
(ここにはリンクしませんが、気持ち悪い話がまとめられたサイトがたくさんあるので検索すればいくらでもガックリすることができると思う)

強大な力で圧倒されたら、いずれはみな恐怖で屈服せざるを得なくなる。
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この状態は日本でいうなら浅間山荘事件やオウム事件の内部にいた人たちに近い。それが国そのものの状態だという事。

さあ、これをどうしろと言うのか。

法の秩序は何処へ行ったのか。
現在進行形で病んだ社会を抱える国の実態を見せつけられた。

この国で作られた物の一番のお客さんらしいアノ国が、買うのをやめた上で軍事を持って介入すればいい。…と思うのだが、必要悪として見逃しているんでしょう。

つまり、腐っているのは世界そのものだね。

時折、差し挟まれる腐った世界に不似合いな美しい空、白茶色けてサラっとした土、建物。

美しい国だからこそ、そこに怯える人たちの恐怖が生きる。

 

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現在進行形で起きている事のドキュメントだから解決はなく、モヤっとしたものが残るのは当然。

だが、個人的に国の行く末よりもモヤっとしたのが英雄のはずのホセ・ミレレスである。

正義の人であり、強い精神力の持ち主であり、医師であり、みなに慕われる。障害が残るほどの事故を起こされてもその心は折れず、なのに、カルテルと国策の陰謀により次第に力を失って行く。

憐れなヒーロー……

の、はずなのに、終盤になってこのヒーローに突然被せられる「女好きで愛人いっぱい」なキャラ。

あれでドン引く人もいると思うのね…。

ドキュメントと言っても全て描く必要はなく、別にヒーローはヒーローでいさせてあげてもいいんじゃない

…と思いつつ、これが『ハート・ロッカー』のキャスリン・ビグロー製作総指揮というところに、ちょっとニヤっとする。

家族も巻き添えになるような大仕事をやっているというのに愛人までいっぱい作る…奥さんから見れば、たぶんエロ親父なんだよね。

完璧な英雄などおらず、みんなが何処か毒されている。

力を持つというのは、そんなことなのかも知れない。


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『罪の余白』ダブルバインド

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罪の余白

   

監督: 大塚祐吉
キャスト: 内野聖陽、吉本実憂、谷村美月、葵わかな、宇野愛海、吉田美佳子、堀部圭亮、利重剛、加藤雅也


公開: 2015年10月3日  観賞: 2016年5月6日(DVD)

 

お話としては面白かったけれども、劇場観賞を見送って正解だったかも。
たぶん、テレビの2時間サスペンスドラマだったら絶賛していると思う。

テレ朝系列制作の映画と一瞬思ってしまったけれども違うのね…ぃゃ、どうしてだろう。やっぱりウッチーだからかも(笑)

◆あらすじ
女子高に通う加奈は、ベランダから転落し命を落としてしまう。彼女は、女子高のカーストの中でトップに君臨する咲(吉本実憂)に憧れる友人グループの一人だった。加奈を男手一つで育ててきた安藤聡(内野聖陽)は自責の念にかられており、娘の死は事故だったと信じていた。ところが、死の真相を探ろうとする安藤の前に咲が立ちはだかり……。(シネマトゥデイより引用)

ウッチーのパパは冒頭はすごく良かったんだけれども、やっぱり後ろに行くほど倉石だった…。
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娘と2人で水槽を覗く時の声は本当にナイーブで優しそうで、久々に『ふたりっ子』や『不機嫌なジーン』の頃のウッチーを思い出したのになぁ…。

なぜ、物語が動き始めると刑事や検視官のようになってしまうのか。

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たまには、もっと優しくてソフトで繊細なダメ男のウッチーが見たい。

もっとも、この映画のウッチーも充分ダメ男ではあるんですけどね。

駄目なのに核心ついたような顔だけはしているから何だかイライラするの(笑)

まぁ…こんな目に遭う親なんか滅多に居ないわけなのだから、こんなことになっちゃったらアレコレと試行錯誤するだろう。その気持ちは解る。解るけれども、自らハマっているよね。笑.gif

一体、どうしてそんな陥れられやすい行動を取るのだろう…と父親に対してヤレヤレと思う一方で、女王のようにこの世界に君臨する咲の方は見惚れるほどの堂々っぷり。

吉本実憂さんって「表参道高校合唱部!」の子だよね。 私はアレを虐め部分が嫌で脱落したので、あのまんまのイメージ。本当にイラつくほど憎らしい女(笑)
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上手いってことだよね。この映画のほぼ全てを彼女が持って行っている。

ストーリーとしては娘と虐めとスクールカーストの狂気と…という部分で「渇き。」と、ちょっと被る。あのくらいぶっ飛んだ演出でこれを見てみたい気がする。

本当に「普通」なのだ。だからテレビドラマで充分…と思ってしまうのね。もったいないな。

しかし、この映画の中に教訓はある。

1つには、もしも子どもが学校で不審死した場合、親がやってはならない行動がこの作品に詰まっている。

もう1つには、JKは恐らく案外狡猾だってことである。

頑張れ、大人。

 

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一緒にパソコン開いちゃうとかバカなのか…。

咲が加奈を殺したに違いないという目星をつけた所までは素晴らしかったのに、その後の行動が何ともお粗末。

あんなにフラフラ学校周りをウロついていたら通報されるわ…するわ。

加奈だけに打ち明けたらしい女優への夢。

スカウトされた事務所で泣いていたが、広い世界に出たら自分がカーストの頂上では居られなくなる不安や、それでも頂点でいたい夢の大きさを表していたのか…よく解らなかった。

彼女にも彼女なりの子供らしい弱さはあり、その弱点が「余白」なのだろうが、そこを訴えるにはクライマックスの展開が浅い。

大体、なぜヒョコヒョコと呼ばれて家に行ったのだろう。ラストまではあんなに狡猾だったのに突然浅はかなJKになっちゃって…残念過ぎだわ。

2つのメッセージを駆使する「ダブルバインド」の使い手に翻弄されて生きていけなくなった加奈。

せっかく行動心理学でそこを教えていたのに、ちっとも生かされなかったね、パパ。


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『ルーム』天窓より高い世界

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ルーム

~ ROOM ~ 

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監督: レニー・アブラハムソン
キャスト: ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョアン・アレン、ショーン・ブリジャース、トム・マッカムス、ウィリアム・H・メイシー


公開: 2016年4月8日  観賞: 2016年4月11日

 第88回アカデミー賞主演女優賞受賞(ブリー・ラーソン)

 

真相が解った時、今、日本人なら誰でも「あっ…」と思ってしまうんじゃないかなあと…タイムリー過ぎて。

だから私たちが今一番解るはずである。こういう事が起きた時、マスコミが、ネットが、どんな風に報道し騒ぎ、野次馬がどんなことに興味を持ちどんな風に評するのか。

◆あらすじ
施錠された狭い部屋に暮らす5歳の男の子ジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)と、母親ジョイ(ブリー・ラーソン)。彼女はオールド・ニック(ショーン・ブリジャース)によって7年間も監禁されており、そこで生まれ育った息子にとっては、小さな部屋こそが世界の全てだった。ある日ジョイは、オールド・ニックとの言い争いをきっかけに、この密室しか知らないジャックに外の世界を教えるため、そして自身の奪われた人生を取り戻すため、部屋からの脱出を決心する。(シネマトゥデイより引用)


予告を見た限りでは、どういう状態なのかよく解らなかった。

もう少しファンタジーに近いストーリーなのかと思っていた。「部屋」というのはもっと精神的な何かの象徴なのでは、と。

実際の事件をモチーフにした小説が原作だったのだとは後から知った。実在の事件の方がもっと犯人が鬼畜で驚いたわ。

フリッツル事件 - Wikipedia

少年目線で描かれる「部屋」は薄暗く天井は高く、オールド・ニックは荒々しく大きい。
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母親が何をされているかは描かれない。

ジャックとしては、母が居てくれるこの世界に不満はそれほど無かったと思われる。だって、他を知らないもの。比較対象がなければ人は不満など抱かないものである。

むしろ、今まで母から教わってきた世界の話が嘘で「外」が存在し、そこで暮らさなければならないと知る不安の方が大きかっただろう。

閉じ込められる世界もそこが全世界なのだと思えば外界の方が気持ち悪い異次元なわけで、「外」がそんなに美しいかというとそんな事はないってのもみんな知ってる。

外の世界へ戻ることを切望し、自分の世界の構築に苦しむジョイを演じたブリー・ラーソンはもちろん素晴らしかったが、「外」との出会いを生まれたての子供のようにリアルに演じたジャック役のジェイコブ・トレンブレイくんが本当に素晴らしい。
  
前半の、あのシーンの表情はもう……本当に。ああ、こういう顔になるだろうさ、って思った。
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「外」は空が高くて広い分、敵もいっぱいいるけれども出会いも愛もあるんだと…そう思わせてくれる描写が良かった。

こんな題材だから、辛いけれどももっとステレオタイプにゲスく描く事も出来たわけで、そんな風にしなかった所に救われる。

スリリングな展開にハラハラしたり、人の情に触れたり、親子問題と社会について考えさせられつつも人間ドラマに魅入る。名作。

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逃げ出すシーンではもうハラハラ。
マットから転がり出て高い青い空が広がった時の表情が…
ああ、きっとこんな風に感動するんだろうな、誰もが初めて空を見た時。
リアルにそう思えたわ。

オールド・ニックが、よく言った通りにトラックに乗せて門の外へ出てくれたよなぁ。

私が犯人だったら、たぶん納屋の外の木に埋める。日本のように隣の家が密着しているわけじゃないし、自分の土地よりも安全な所なんてなさそう。犯人もずいぶんなお馬鹿さんだったと言う事か。

ジャックをまともに見れないジョイの父親の複雑な気持ちはよく解る。
子どもは孫であると同時に娘を監禁した男の子供なのだから。しかし、その辺は何も触れずに和解もせずに終わってしまった。もっとも、そういう男だから母親は別れたという事なのだろう。

ジョイの母親の感情も見えづらかったな。だから、初めは金のために娘をマスコミ取材に出すのかと勘違いしてしまったほど。

結局、母親の彼氏という人が一番ジャックをよく見て理解していたのかもしれない。血の繋がりがない傍観者の利というやつなのかも。

「どうしてそんな残酷な事が言えるのだろう」とマスコミの言葉に憤慨しながらも、確かに生まれた時に外に捨ててくれと言う事はできたよな。とは思った。

しかし正しいことが正義とは限らない。何が正しいとも言えない。

どんな環境であろうが、それが独りになりたくない願望の果ての事であろうが、子どもを5歳まで育てきったのは間違いなくこの人なのだ。

すっかり鬱になってしまったジョイのことは誰も責められない。こんな体験、ほとんどの人間が一生のうちにする事ではない。

日本で最近発覚したあの事件も…憎まれるべきは犯人なのに、やはり色々と邪推され毎日毎日報道される。

それでも、本来居るべき場所に戻れたことは未来を掴む可能性を得られたことのはずだから。

ここで幸せになってほしい。

ジョイを連れて、「部屋」に戻るジャック。

どんな場所だろうが、そこはジャックの故郷だった。
牢獄のような環境なのに、なぜかノスタルジックなこのシーンが好き。

「これが部屋?小っちゃくなったの?」

部屋が小さくなったのではなくて、ジャックが大きくなったんだよ。広い世界を知ったから。本物の世界を見たから。


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『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』なぜホロコースト映画を観るのか

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アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち

~ THE EICHMANN SHOW ~ 

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監督: ポール・アンドリュー・ウィリアムス
キャスト: マーティン・フリーマン、アンソニー・ラパリア、レベッカ・フロント、ゾラ・ビショップ、アンディ・ナイマン、ニコラス・ウッドソン、ベン・ロイド・ヒューズ、ベン・アディス、ディラン・エドワーズ、ダスティン・サリンジャー、ソロモン・モーズリー、キャロライン・バートリート、エド・バーチ、アンナ・ルイーズ・プロウマン、ナサニエル・グリード、バイドタス・マルティナイティス、イアン・ポーター、ネル・ムーニー


公開: 2016年4月23日  観賞: 2016年5月4日

 

1960年。15年間逃亡生活を送っていた1人の元ナチス親衛隊将校がアルゼンチンで身柄を確保された。
彼の名はアドルフ・アイヒマン。
第二次世界大戦、ヒトラーの命の下で「ユダヤ人問題の最終解決」、すなわちユダヤ人大量虐殺を推進し、命令した男。

◆あらすじ
1961年、ホロコーストに関与し、数多くのユダヤ人を強制収容所に送り込んだ元ナチス親衛隊将校アドルフ・アイヒマンの裁判が行われることになった。テレビプロデューサーのミルトン・フルックマン(マーティン・フリーマン)と、撮影監督レオ・フルヴィッツ(アンソニー・ラパリア)はこのニュースに関心を持つ。彼らは裁判の模様を放映しようと意気込み……。(シネマトゥデイより引用)

 

この作品は、1961年、イスラエルで行われたアドルフ・アイヒマンの裁判を世界にテレビ中継したスタッフを描いたものである。

第二次世界大戦下で事実上ホロコーストに関する指揮をとり、数百万人のユダヤ人を絶滅収容所に送り込んだとされるナチスドイツの元親衛隊将校。

ここで改めて年号を見て「えーー」と思うのだ。

1961年生まれの人は2016年現在55歳。老人というにはビミョーな若さで、仕事もバリバリやっているだろう現役世代。当然「戦争を知らない子どもたち」である。つまり、この裁判はもの凄く近代に行われているということ。

しかも私たちが今、どんなに歴史音痴でも「アンネの日記」とユダヤ人虐待くらいは解っているホロコーストという世界的黒歴史。この事実はこのアイヒマン裁判で世に知られたのである。

この頃まで、ドイツは当然ナチス政権が引き起こした黒歴史に蓋をして語らないようにしていた。そして虐待された当のユダヤ人たちも語ってこなかったのである。

思い出したくもない惨劇だったということもあるだろうが、どうもユダヤ人社会ではホロコーストから生き残った人たちは「恥」だと思われていたらしい。戦わず逃げてきたくらいの感覚だったのだろうか。真実を知らなければ他人は何とでも言える。

このアイヒマン裁判と、『顔のないヒトラーたち』で描かれたフランクフルト・アウシュビッツ裁判で初めて多くの証言者がホロコーストを語り、世界を震撼させた。

知らない事は罪である。

この裁判は、歴史的にそういう大きな意味のある裁判だった。

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さて、映画の話。

目を覆いたくなるホロコースト映像は多々出て来るが、主題はあくまでもホロコーストの悲劇そのものではなく、テレビマンたちそれぞれの目線から見たアイヒマン裁判。

反共産党員としてアカ狩りに遭い干されていたドキュメンタリー監督、レオ・フルヴィッツは、この世紀の仕事を引き受ける。

しかし「仕事」は甘い物では無かった。

イスラエルには、この裁判でホロコーストの象徴であるアイヒマンを断罪することにより、より団結力を持つ国家を造るという政治的思惑もあった。

また、ナチズムがこの世から消えたわけではなく、この裁判に反対する一派も当然存在する。

アイヒマン裁判のテレビ放映は、危険な情勢の中で行われる大仕事だったわけである。

その上、プロデューサー、ミルトン・フルックマンが用意したイスラエルの撮影クルーたちはユダヤ人であり、アイヒマンへの憎しみでいっぱい。フルックマン本人も収容所体験者である。

強制収容所の記憶を掘り起こされて憎しみで苦しむクルーたち。
憎しみの気持ちもあるが、それ以前にテレビ番組として視聴率を取らなければならない事情を抱えるプロデューサー。
そしてお涙ちょうだい番組ではなく「アイヒマンという人間」を撮りたい監督。

様々な思惑、様々な事情を抱え、それぞれが仕事に挑む。
さぁ、どうなるのか。

というのがこの作品。

サスペンス的な要素も多少はあるが、ほぼドキュメントかと思うくらいテレビ放送事情がしっかり描かれた96分。

戦後70年を過ぎ、ホロコースト題材の映画も角度を変えてきた。
悲劇物語ばかり見てもタオルを涙で濡らすだけでお終いである。

劇中で、裁判なんか何故見なくてはならないんだと笑うスポンサーにフルヴィッツは「勉強のためだ」と言う。

それはこの映画を観ている私たちにも当てはまる問いだと思う。

GW、他に観る映画がいっぱいある中で、なぜこんな大量に人が殺された辛気くさい裁判の話を好き好んで選ぶのか。

私たちはなぜホロコーストを観るのか。

政治家になりたいわけじゃあるまいし、今さら学者になるわけでもない。

それでもこの歴史に目を向けずにいられないのは、ここに人間の根底にある全ての争いの元があるからだ。

妬みから来る虐待。集団心理。徒党。自由の抑制、洗脳、DV、考える事の放棄、嘘。

ただ命令に従うことを善とするアイヒマン・シンドローム。

善良な市民がいつでもファシズムに飲まれる事が出来る要因。

学校など小社会で起きる虐め事件から、ひいては宗教や民族間での闘争、国と国との戦争まで。

全ての要素がホロコーストに詰まっている。

だから私たちは正しく知り、正しく学ぶべきであり、この裁判をこうして世界に放映したこの人たちの功績は素晴らしい。

作品その物は人物の掘り下げなど物語性は薄く、あっさり目。
学ぶための映画。

 

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この世紀の裁判と同時期に世間の関心を惹いていたのが、ガガーリンの世界初有人宇宙飛行とキューバ危機だったというのは興味深い。

そりゃ視聴者としてはそっちを見たいよね。
「今」起きている事をリアルタイムで伝えるのがテレビ中継の素晴らしい所なのだから。

だから、お涙頂戴だろうが、よろけて倒れる証言者の悲劇的映像こそ撮ってほしいのがプロデューサーの本音。

それでも、フルヴィッツ監督はアイヒマンの表情のみに注目し続けた。

結末は「ハンナ・アーレント」などでも描かれた通り、結局アイヒマンという人間は裁判中、何の感情も現さなかった。

アーレント言うところの「凡庸な悪」。
「命令だからやっただけ」であり、その無反応さは病的にすら映る。

フルヴィッツが撮りたかった「人間らしい感情の起伏」はついに姿を現さなかった。
だから、放送が成功してもこの映画の後味は苦い。

過去の記憶に苦しめられた撮影クルー。
「人間・アイヒマン」を視聴者に見せる事に失敗したフルヴィッツ。

それでも、この放送によってホロコーストに苦しめられた人たちの言葉が初めて全世界に伝えられた、それには大きな意味がある。

この部分は『スポットライト』も同じ。
報道の力は真実を隠すことなく伝えれば偉大だ。


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『顔のないヒトラーたち』8000人の容疑者・アウシュビッツ裁判

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顔のないヒトラーたち

~ Im Labyrinth des Schweigens ~ 

  

監督: ジューリオ・リッチャレッリ
キャスト: アレクサンダー・フェーリング、フレーデリケ・ベヒト、アンドレ・シマンスキ、ヨハン・フォン・ビュロー、ヨハネス・クリシュゲルト・フォス

公開: 2015年10月3日  観賞: 2016年5月8日 DVD観賞


世界を震撼させた歴史的大事が発覚する話をベースにしながら、ストーリー自体は1人の功名と正義に逸る青年の成長記だったりする。

上手く絡むもんだなぁ…と感心しつつも思いがけず勉強になる作品。

◆あらすじ
1958年の西ドイツ・フランクフルト。第2次世界大戦の終結から10年以上が経過し、復興後の西ドイツではナチスドイツの行いについての認識が薄れていた。そんな中、アウシュビッツ強制収容所にいたナチスの親衛隊員が、規約に違反して教師をしていることがわかる。検察官のヨハン(アレクサンダー・フェーリング)らは、さまざまな圧力を受けながらも、アウシュビッツで起きたことを暴いていく。(シネマトゥデイより引用)

1963年に西ドイツ・フランクフルトで行われたアウシュビッツ裁判の立役者となった検事たちを描いた作品。

アイヒマン、メンゲレなどの「大者」ではなく「小者」の戦争責任を追及するという難しさ。黒歴史に蓋をしたい敗戦国の傷を掘り起こす。

「アイヒマン・ショー」が1961年。そこでもホロコーストを知らない人々が描かれたが、これも1963年。こんな近代まで蓋をされていた歴史だったのだと言う事には改めて驚いた。
  f:id:nakakuko:20160520004238p:plain


「20歳代の人間はアウシュビッツを知らない」という状況のドイツ。
信じられないとも思うけれども、戦争に関わった証言者が生存しているからこそ蓋をしてきたのだということは何となく理解できる。

国民のほとんどがナチに関わって生きてきた。信じていたし、絶対権力に反論などするはずもなかった。

ただ従っただけ。顔のないヒトラーたち…すなわち、アイヒマンたちの群れが生き残る社会。

そんな中で、主人公・ヨハンは無邪気にも真実を追求しようと張り切り始める。周りの目は冷ややかで協力者も少ない。

誇りに思いたい自分の親の代まで犯罪者になるのだから、みんな関わりたくないのは当然だ。
 f:id:nakakuko:20160520004304p:plain


戦争の責任とはどこまであるものなのか、恐怖政治下で命令に従う事は罪なのか、「正しい事」は全て正義なのか、様々な疑問。

「私は貝になりたい」や「愛を読むひと」を思い起こさせられた。

体験談は映像ではなく語りで聞かせる演出なので残酷な描写を見たくない人でも見やすいと思われる。

主人公がホロコーストについてまるで無知であり、調査する中で真実に触れていくという描き方なので、想定外に初心者向けの手引書のようになっていた。

演出的には少しメロドラマっぽいところもあるけれども見応えはあった。ホロコーストを学ぶ上ではお薦めの1本。

 

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ドイツ国内で彼を有罪に出来れば語り継がれる偉業になる。
元ナチス親衛隊だった人間は「教師」という職には就けないはずなのに、教師をしている男を見つけた。記録を調べて免職にしなければ。切っ掛けはそんな事だった。

1958年、フランクフルト。

交通違反ばかりを担当させられている新人検事がアウシュビッツの真実に挑む。

挑めるわけがない。無知すぎて。

戦後10年以上も経っているはずのこの時点で、ドイツ国内ではナチスが何をしてきたかという教育がまるで為されてなかった。若者層は、検事でさえ知らない黒歴史。

アウシュビッツの真実に初めて触れたヨハンが異常なほどの正義感に憑りつかれてしまったのも無理はない。

下っ端役人を追っているハズだったのに、いつの間にか人体実験の悪魔として有名なヨーゼフ・メンゲレを勝手に追うようになっていたり、ハーケンクロイツが描かれた石を投げ込まれたり、自分の父親もナチスSSだったと知ってヤサグれる流れなどは、いかにもドラマ的で創作エピソードなんだろうなぁ、と思うものの見応えはあった。

元ナチスと言っても、戦争が終われば普通の気のいいパン屋だったり紳士だったりするわけで、それを全て「罪人」とするのも残酷なことのような気がする。

けれども、真実に蓋をし続け誤魔化すことはあってはならない。正しく知って考える機会だけは与えられなければならない。

メンゲレやアイヒマンは権力者に守られているから一介の新人検事などに手出しができるはずもない。

我々国民は真実を知るべきだ。
嘘と沈黙はもう終わりにする。

アウシュビッツ裁判(ロベルト・ムルカ等に対する裁判)は1963年12月20日から行われ、17名が殺人ほう助などの罪で有罪判決を受けた。

しかし、「自責の念を見せる被告は居なかった」というテロップが後味悪く、観る者を突き落す。

それでも彼らは、ドイツがホロコーストを知り、国全体が過去と向き合う切っ掛けとなる道を開いた。この功績は偉大だ。

これをご覧になったら『アイヒマン・ショー』もぜひ。 


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『ディアーディアー』大停電の夜に……

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ディアーディアー

   

監督: 菊地健雄
キャスト: 中村ゆり、斉藤陽一郎、桐生コウジ、染谷将太、菊地凛子、山本剛史、松本若菜、柳憂怜、政岡泰志、佐藤誓、信川清順、川瀬陽太、木村八重子、菅野久夫、井原道、池下リリコ、村上ユキヒコ、小笠原治夫、川連廣明、隅田恵里子


公開: 2015年10月24日  DVD観賞: 2016年6月9日

 

「ディアーディアー」は、初めは「Dear Dear」なのかと思っていたの。
「Dear Deer」だったんだね。

シシガミさまいいえ、リョウモウシカ

     f:id:nakakuko:20160610012356p:plain

◆あらすじ
山間部の地方都市、幻のシカを発見した3きょうだいは有名人になるが、虚偽だったとみなされてしまう。25年後、町に残った長男・冨士夫(桐生コウジ)は家業の工場が抱える借金を背負い、うそつきと言われたことがトラウマとなった次男・義夫(斉藤陽一郎)は精神病棟で生活し、妹・顕子(中村ゆり)は駆け落ちして上京した。ある日、父親の危篤をきっかけに義夫と顕子は10年ぶりに帰郷するが……。(シネマトゥデイより引用)

シッカリしていそうでどん底な兄。メンタルの弱い弟。奔放そうで自由になれない妹。ダメなアラフォー、アラサー兄妹の物語。

近年、ダメな大人の物語が多いような気がして御時世なのかなぁと思っていたのだが、つい最近見たドラマのおかげで向田邦子の『阿修羅のごとく』を思い出す機会があり、普遍的なものなのだと思い直した。

まぁメンタル的な部分では徐々に徐々に弱くなっているのは確かだけれども、年を取ろうが結婚しようが親になろうが、人間、どこか愚かなもんなんだろうな、と。

一生懸命生きてるつもりで(あるいは一生懸命生きることを投げ捨てて)空回りしている人たちの物語は好きだ。

好きだ、というよりも、まるで自分を見ているように切なくてバカバカしくなってくるから。だから、笑いながら泣く。

これも、そういう作品だった。

「ぜんぶ、シカのせいなんだーー!」という過去に縛られたまま、父の危篤に際して久々に集まる解散家族の思い出手繰り寄せ。

昨年、亡くしたウチの父の葬儀を思い出した。色んなシーンがアルアルだった。

昔の昔の事まで、ぜーーんぶ振り返って闇になって襲って来るから葬式は本当に怖い。振り返りは恐い(笑)
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過去が何か足枷になっていて、そのせいで進めない人生。

甘えられるものが無くなった時に始まるのかも知れないと、自分が常々思っていたことがストーリーの中に描かれていた。

カオスな状況を面白くしているのは、三兄妹の演技あればこそ。

斉藤陽一郎さんの義夫がね…もう、ホント、見ていてイライラした(笑)身内に居るので、こういう人が。本当に上手いわ~。
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桐生コウジさんの長兄・冨士夫はお母さん的立場。お父さんを看取ってきた苦労が病室でのワンシーンで表現されていた。

中村ゆりさんの顕子が本当にイケスカナイ美人で(笑)しかし、こんなに色っぽいバストの持ち主だったとは~今まで見たどの作品でも気づかなかった
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怒鳴り声が交差する多くのシーンよりも何故か印象に残る数少ない自然の沈黙。

優しさを引き出したり、ホラーのような音にドキッとさせられる劇伴から、EDの主題歌まで、岡田拓郎さんの音楽も良かった。

これが長編初だという菊地健雄監督作品。

混沌とした世界の中に一筋、山の上からの優しい視線を感じたわ。
騒々しくもユーモラスで優しい。良作。

 

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闇だと思っていたことが逆に家族の絆だったり、ぜーんぶシカの…だと思っていたことが自分のせいだったり、そういう「気づき」の物語。

兄妹の父は最後まで映さない。
この人の育て方や、この人が作ってきた「家庭」が子どもたちの人生に大きく影響しているはずなのに。

兄妹にとっては、実家=父=リョウモウシカ なんだろうな。

振りかえりたくない過去。追って来る過去。

けれども、カメラを覗く父の笑顔は覚えていたりするのである。

殴られて育てられた思い出も、その人の死によって浄化される。美しい思い出に気持ち悪いほど変わっていく。我が実家も体験したばかりなのでよく解る(笑)

病室で父の呼吸器を外そうと手を掛ける兄。
介護に苦しんだ経験のある人ならば、あれも理解できる部分だろう。

よく解っている脚本だなぁと思った。

親を失った時に初めて子どもは大人になる。

大人に成りきれずに嘆いてわめいて鹿のせいにして…
不倫殺人も空き巣も狂乱も、停電に救われる。

通夜であんなことになっちゃって告別式はどうするんだよ、と思ったら、ボロボロの大人になった三人の葬列。

工場がダメになったって、離婚したって、まだ不安定だって、シカが居たって居なくたって。この人たちはこれからは大人の顔で生きていける。そう思った。

ダメな大人でも生きていていいんだって思える作品だった。
過去ときちんと向き合えば、家族はきっと絶滅しない。


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『マネーモンスター』エンターテイメントの価値

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マネーモンスター
~ Money Monster ~

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監督: ジョディ・フォスター
キャスト: ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ、ジャック・オコンネル、ドミニク・ウェスト、カトリーナ・バルフ、ジャンカルロ・エスポジート
公開: 2016年6月10日  観賞: 2016年6月10日

 

ジョディ・フォスター監督作品にして本人は出演せず、制作に徹した事で話題の本作。

95分と非常に見やすい時間で緊張感もあり手堅くまとまった印象。

株の上げ下げがショーになるアメリカという国で起きたショーのような事件…。
顛末も…ちょっとショー的。

◆あらすじ
リー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)が司会を務め、その巧みな話術で株価予想や視聴者への助言を行う高視聴率財テク番組「マネーモンスター」。番組ディレクターのパティ(ジュリア・ロバーツ)の指示を聞かず、アドリブ全開でリーが生放送に臨む中、拳銃を手にした男カイル(ジャック・オコンネル)がスタジオに乱入してくる。彼は番組の株式情報によって財産を全て失くしたと憤慨し、リーを人質に番組をジャック。さらに放送中に自分を陥れた株取引のからくりを白日のもとにさらすようパティに迫るが……。(シネマトゥデイより引用)

怠慢警備の隙をついて部外者が信じられないほど簡単に入れちゃうセキュリティの甘さ…日本のテレビ局の方がもっと厳重そう。笑.gif

クルーニーさんは素敵だけど、金ぴかハットを手に踊っちゃったりする姿は何だかね…日本のタレントで言ったらこれ、踊る みのもんたくらい反感買う姿かも(笑)(つまり、金持ちが金融解説しながら偉そうに踊ってる…みたいな笑.gif)
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株価の上げ下げもショーで見せちゃうアメリカという国、高視聴率らしいし、ドリームを求める人が多いのだろう。

けれども『マネー・ショート』でも語られた通り、負け組の上に勝ち組が立つシステムである。こんなタレントの言うままに売買してたら大事故も起ころうというもの。

そんなこんなでカイルくんには全く同情できなかった序盤だが、番組ジャックは時にゲイツに主導権を握らせ、時にプライドをズタズタにし、時にカイルくんに憐みを誘う…というなかなか飽きさせない展開。
 
ベタと言ったらベタだけれども、最終的にはただの金融ミステリーに収まらない人間ドラマなのだった。
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物語と同じくキャストもクルーニーさん、ジュリア・ロバーツ始め手堅く上手い。どこまでも「ショー」。 ジュリア・ロバーツも好きだけれどもアイビスの広報担当・ダイアンを演じたカトリーナ・バルフさんが、ちょーお美しい。
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『SUPER8』でお母さんの役をやっていらしてらしいけれども全然記憶にないなぁ。
アイルランド出身のモデルさんで、『ピープル』の「世界で最も美しい50人」に選出されているらしい。

彼女の活躍もチェックして。


お話としてはとても面白かったけれども、ちょっとテレビドラマ的かなぁとも思う。

「相棒」や「踊る大捜査線」みたいな刑事ドラマシリーズの1本としても似たようなネタはありそう。(スケールは小さくとも笑.gif)

そして個人的には、あの結末には納得出来てないから…。

ああいう方向に持っていくことで、より安いショーになっちゃった気がするの。

よくも悪くもザ・エンターテイメント。という事で。

 

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番組がジャックされるという展開は予告で散々見ていたのだが、序盤では、あれ、『テロ,ライブ』のリメイクだったっけ…と思ってしまった。笑.gif

最終的には『テロ,ライブ』よりもエンタメ的で、あんなにゲスくもなく、深い闇も無かった。

だから、本当にただの娯楽作品だ。

テレビで訴えれば株価は上がると信じ、「さあ、オレの価値はいくらだ!?」とゲイツがカッコ良く言い放った途端に下落するシーンと、カイルくんの彼女には笑ったわ(爆)

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こうして金持ちも有名タレントも、カモにされる貧乏人もみんな同じだ、ただの視聴率稼ぎのネタなんだと気づいた2人が手を携えてアイビスの不正を暴く展開、結構好きだったよ。

なのに、どうしてラスト、カイルくんを殺してしまう必要があるのだろう。

負け犬が死んでも熱狂していた視聴者は気にも留めない。今日もテレビも金融も同じように動いていくよ…という苦さを残したかったのだろうが、「ほら、苦さ残したよ!ドヤッ!」というあざとさを感じてしまった。

世の中はすっかり元通り。不正のネタコラだけがYouTubeで再生回数を稼いでいるよ、平和でクズな国だねという皮肉と、でもカイルくんも生きていてゲイツだけは彼を忘れないよ、という温かさやユーモアを残してくれればもっと名作になった気がする。

悲劇作ればいいってもんじゃないと思うのだった。


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『クリーピー 偽りの隣人』ご近所付き合い

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クリーピー 偽りの隣人

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監督: 黒沢清
キャスト: 西島秀俊、竹内結子、川口春奈、東出昌大、香川照之、藤野涼子、戸田昌宏、馬場徹、最所美咲、池田道枝、佐藤直子、笹野高史


公開: 2016年6月18日  観賞: 2016年6月12日(試写会)

 

オンライン試写の後、劇場試写会で観賞。

サスペンスに分類されているようだけれども、立派なサイコホラーだと思う…。
つまり、ホラーに耐性のない方にはお薦めしない。

まさに、その意味通り『クリーピー』(気味悪い)

西島さん…いつまでも真実追っているからこんな事に……(泣)

◆あらすじ
刑事から犯罪心理学者に転身した高倉(西島秀俊)はある日、以前の同僚野上(東出昌大)から6年前の一家失踪事件の分析を頼まれる。だが、たった一人の生存者である長女の早紀(川口春奈)の記憶の糸をたぐっても、依然事件の真相は謎に包まれていた。一方、高倉が妻(竹内結子)と一緒に転居した先の隣人は、どこか捉えどころがなく……。(シネマトゥデイより引用)

わざわざ「偽りの隣人」というサブタイを付けているのはどういうことだろう…。

で、あの予告を見せるのだから初めからネタバレがうんぬんとか、あまり考える必要はないのかも。

香川さん演じるアレはアレで、藤野涼子さんはアレで、ニシジはアアなるんだよぉぉ…と、ある程度知ってしまっても充分に雰囲気や映像で楽しめる(あるいは気持ち悪がれる)事は確か。だって、ホラーだから。

西島さん的には「菊田の想いがやっと叶った結婚生活」というインタビューを読んだが(「ストロベリーナイト」)、その絡み以外にも、香川さんと西島さんは『ダブルフェイス』『MOZU』『流星ワゴン』と、コンビのような主要キャストとしての共演が多過ぎ、竹内さんはつい最近『残穢』「家」にまつわるホラーを観たばかりで、とにかく…キャスト的に色々混ざる

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まぁ、好きな人たちだからいいんですけどね…何か狙ってわざとこういうキャストにしたのだろうかと勘繰りたくなるくらい被ってるよね(笑)

しかし、そういうキャスト被りを吹っ飛ばすくらい気持ち悪いので安心して…というよりも、注意して。

ご飯は観賞前に済ませてね。 想定以上に恐くてグロい。


とにかく、西野がもう不気味で不気味で…香川さん史上一番気持ち悪い役かも。
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「ソロモンの偽証」後、初めての出演作か藤野涼子ちゃん。やっぱりいいわ。この子、上手い。
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東出@野上がボーっとして生きている人じゃないみたいに見えたんだけれど、それもこの作品だとただただ不気味。
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隣のご主人の顔も解らないものかね…という向きもあるかも知れないが、出入りの激しい集合住宅だと割と当たり前のアルアルである。

一戸建てでも、アメリカの田舎町じゃあるまいし隣りの家の壁がすぐ横にあるような日本の住宅で…という見方も近年だともう変わって来ているかも。

「変な人」は多いし、みんな「個人」が大事だし町内会なんて面倒くさい。
人間関係が希薄になって来ている昨今だからこそ、意外とリアルなストーリーなのかも知れない。

つまり、犯罪や「危険」は、社会のそういう隙を狙って潜り込んで来るのである。たぶん。

この映画を見たら、「隣の人を警戒しよう」と思うのではなくて「隣をもっと知ろう」と思わなければならないのかもね。

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もっとも、作品的には、そんな説教くさい物語ではありません。笑.gif

日常の隙間に入り込んでくる黒い煙のような闇がいつの間にか自分を包んでいる…そんなドロっとした気持ち悪さを体感する。

 

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東出@野上も、笹野さんもさ…どうしてそんなにシャカシャカ家の中に入って行っちゃうかな笹野さんなんて特に、野上を殺した相手がいる家に入って行くと解っているはずなのに。

どうやって言うこと聞かせているのかと思ったら、ああ、薬漬けね…なるほど。
「私とご主人とどちらが魅力的ですか?」と言うけれども、魅力的なのは「私」じゃなくて薬じゃ…。汗.gif

そして、子どもには殺人と遺体処理をさせることで罪悪感を持たせ、縛り付ける。

もっとも、澪には罪悪感があるかどうかよく解らなかった。
まぁ、おかしくもなるよね…あんな生活を続けていたら。

「ざまあみろ!!」と言って、1人何処かへ去って行ったけれども、あの子はこれからどうするんだろう。西野と同じ種をまく子にならなければいいけれど。

そしてたぶん、たった1人の生き残り早紀さんもそうなんでしょう…。消えた記憶なのか本当は覚えているのかよく解らないが、澪と同じことをやっていたんでしょう。両親と隣人の遺体が出てきたあの家で。
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その事に、観た翌日、ふいに気付いてゾッとした。
記憶を呼び戻してまで気持ち悪さを提供してくれる映画だ。汗.gif

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『64 -ロクヨン- 後編』原作の先へ…

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64-ロクヨン- 後編

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監督: 瀬々敬久
キャスト: 佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、瑛太、三浦友和、永瀬正敏、吉岡秀隆、緒形直人、仲村トオル、滝藤賢一、奥田瑛二、夏川結衣、窪田正孝、坂口健太郎、筒井道隆、鶴田真由、赤井英和、菅田俊、渡辺真起子、萩原みのり、渡邉空美、黒川芽以、佐藤優太郎、嶋田久作、緋田康人、矢柴俊博、加藤虎ノ介、大西信満、管勇毅、忍成修吾、森本のぶ、結城貴史、日向丈、烏丸せつこ、小澤征悦、金井勇太、三浦誠己、芳根京子、菅原大吉、柄本佑

公開: 2016年6月11日 観賞: 2016年6月15日

これは~……
ドラマ版を見ちゃってる身としては何とも言えない。
原作もドラマも知らずこの映画が初見って方の感想が知りたいわ…。

あちこちで発表されているので今さらネタバレにはならないと思うから書いておく。

原作と結末違います。

◆あらすじ
昭和64年に発生した未解決事件、通称“ロクヨン“。時効が近付いた平成14年、ロクヨンをなぞるような新たな誘拐事件が発生する。組織の中での葛藤、記者クラブとの確執、そして父として家族の問題も抱える広報官・三上は、事件の真相の先に何を見るのか?(ぴあ映画生活より引用)

 

原作は原作で映画は映画だ。

だから、監督の受け止め方でどんな風に改変されてもそれは別に自由だと思う。改変した結果、これじゃ原作者の意図が伝わらないんじゃない…と思ったとしても、映画は映画なので面白ければそれでいいのだろう。(もっとも、その場合は「原作」ではなくて、せめて「原案」と表記したら…とは思いますが)

前編でも思った事だが、後編では、より「浩市さまの映画」感が増していた。
特に改変されて付け足された部分に。


まぁ、浩市さまの映画であることは確かなので、それもいいのだろう。
とにかく、私はもう「ドラマ『64』」を見ていない自分には戻れないので、真っ白な頭では観賞できないのである。

「無」の状態での感想としては、失速したというわけではないが前編ほどグッと来るものはなく、正直ちょっと暑苦しかった(汗)

中で、後編ハイライトは緒形直人の素晴らしさ。 うん、いい役者になったなぁ…。
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後はもう、素晴らしい俳優陣のことを書けばキリがないが(いっぱい出過ぎてるから(笑))、模倣誘拐捜査班の皆さんのカッコ良さとキャストの濃さには目が丸くなるわ

何か大西信満さんに似てるけど違うよね…と思ったら本当に大西さんだったり、追跡データ見てる忍成修吾似のお兄さんが可愛いじゃないかハート2.gifと思ったら本当に忍成くんだったり……。

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中央から来た記者の集団の中に加藤虎ノ介が居たり、宝探しみたいな豪華さ。笑.gif

その代り、前編から出ているキャストはみなさん…何だかセリフも減って存在が薄くなった感じ。
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まぁ、様々な大人の事情は見え隠れするものの、1本の作品の落としどころとしては良かったのだろう。

私が知っている『64』とは違うけど。

【64(ロクヨン)】土曜ドラマ 第5話「指」最終回 感想 【 ドラマ@見取り八段・実0段 】

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


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ここから下にはほぼドラマ版との比較(しかも愚痴(笑))が書かれています。劇場版に満足したから読みたくないという方はスルーで。汗.gif


三上が広報官を辞めてしまう展開にはガッカリだ。

警察とは権威で凝り固まった組織。署内の勝手な思惑で情報を隠蔽したり、面倒な記者をわずらわしく思って情報を与えない風潮もあるかも知れない。

しかし、出来るだけの事はしよう。
警察と世間を繋ぎ、閉ざされてもノックし続ける窓で在り続けよう。

そういう至誠を見せ続けると決意する三上の話……だった気がするんだ泣.gif「64」という作品は。

「64」は3つのパーツで出来ている。

1つは、たった7日間の昭和64年に起こった未解決誘拐殺人事件が現在に及ぼす影響。

もう1つは警察内部の軋轢やしがらみや競争、隠蔽体質、その中で記者たちに情報を提供しなくてはならない広報官を描くお仕事事情。

そして、もう1つが三上、雨宮、目崎という3人の父たちと娘の物語。

そして、そのパーツはバラバラではなくリンクしている。

未解決事件のその後に関わったからこその記者との軋轢であり、事件当事者の実名を公表するかしないかという討論を超えて信頼を築いたからこその後編のあの記者発表での一幕である。

地元記者は「俺たちの県警」が全国紙に馬鹿にされているあの状況が悔しいのだ。だから激しくぶつかって来る。

三上が追跡車に乗り込むことになったのは、もちろん真実を知りたいという欲求もあるが、リアルタイムで捜査状況を実況することで広報の仕事っぷりを見せつけているのである。

結果、地元記者たちは「すごいだろ、やるだろ、俺たちの県警!」と散々責めたてていた全国紙記者に言えるわけで、ここは三上の広報官としての誇りがもっと描かれるはずの部分…。

それが全く感じられなくてガッカリした。この描き方だと前編で造り上げた記者たちとの信頼関係が、無くても良いエピソードになってしまう。

そして、広報官としての仕事に誇りの見えない劇場版の三上は、犯人に勝手に接触して捜一の刑事よろしく追い詰めるという…もう完全に刑事ドラマになってしまったじゃないか。汗.gif

わざわざあんな川に入って乱闘するとか、捜一の方々の靴や服も汚れるでしょ…。怒.gif

何よりも、目崎の小学生の娘をあんな現場に連れて行ってわざわざ傷つけるとか、何の必要があるのだろうか。「娘を傷つける」ことに一番敏感になっているはずの三上なのに(の、はずなのに)

目崎と三上を刑事さんたちが連れて行った後、あの場で泣いていた娘に誰も気を配らないのにもびっくりしたわ。(あの子はあの無愛想な秋川が連れ帰ってやったんだろうか汗.gif)

そして、結局、「警察を辞めて娘はオレが自分で探す」ってどういうことだろうか。警察に居ても探せなかったのに一般人になったら探せるわけがないじゃん…。汗2.gif

結局、地道にコツコツでも繋がりを作って行こう、橋渡しになっていこう、という仕事の誇りも記者たちとの絆もどうでも良くなってしまった劇場版。

原作の横山先生はインタビューで「64じゃなくて65ですね」とおっしゃったらしいけれども、つまり…意図が違うという事ですよね。

1本の刑事もの映画としてアリだとは思うが、「64」としては、とても残念。

 

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『貞子vs伽椰子』とりあえず…安藤政信を見よう

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貞子vs伽椰子

  f:id:nakakuko:20160621004414p:plain

監督: 白石晃士
キャスト: 山本美月、玉城ティナ、安藤政信、佐津川愛美、田中美里、甲本雅裕、菊地麻衣、七海エリー、遠藤留奈、芝本麟太郎


公開: 2016年6月18日  観賞: 2016年6月20日

 

かつて『リング』はJホラーの金字塔であった。
『呪怨』は時系列を移動する手法で、違和感という新たな恐怖を見せた。

貞子も伽椰子も悲しい背景を持つ霊だった。
そう、間違いなく亡霊だったのに…。

21世紀の彼女たちはもうクリーチャーであり、キャラクターなのだった。

さあ、戦え。

◆あらすじ
女子大生の有里(山本美月)は、あるビデオを再生する。それは、観た者に貞子から電話がかかってきて、2日後に死ぬという「呪いの動画」だった。一方、女子高生の鈴花(玉城ティナ)は引っ越し先の向かいにある「呪いの家」に入ってしまう。霊媒師の経蔵(安藤政信)は二つの呪いを解くために、呪いの動画の貞子と呪いの家に居る伽椰子を激突させようとするが……。(シネマトゥデイより引用)

ツイッターTLに上がってくる評が面白いので、つい観に行ってしまった。つい…(笑)

安藤政信が選んだ仕事なのだから、きっと面白いに違いないと思いつつも尻込みしていたのに。

で、結果、まぁ…色んな意味で面白かった。
ラストは開いた口が塞がらない…ってレベルに驚いた

とりあえず、近年の両シリーズの続編たちに比べて映像は格段に素晴らしいです。
だから危うく恐がりそうにすらなってしまったわ(笑)

でも、ストーリー的には「無い」ものだと思ってもいい(あ、言っちゃった汗.gif)

特に『呪怨』の方は、もう、ただ、あいつらが出てきてヤりまくるだけだから。
トシオくんも、すっかり子泣き爺ばりの妖怪だしな。
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正統派な心霊Jホラーを求める方にはお薦めしません。
『リング』『呪怨』のオリジナルを充分理解していて、なおかつ「祭りじゃ!!」と思える方にだけお薦めしとく。

でも、とりあえず安藤政信のロックな霊媒師っぷりは見といて損はしない(笑)
 

f:id:nakakuko:20160621021324p:plain


あんな胡散臭い除霊ポーズ、下手な人がやったら全くリアルに見えないから
安藤政信だから、かろうじて上手く行ってるように見えるんだ。うん、たぶん。

あと、佐津川愛美さん、さすがだな、と思いました。笑.gif
 f:id:nakakuko:20160621021343p:plain


とりあえず、ここ最近の『呪怨 -終わりの始まり-』『貞子3D』よりは、ずっと面白かったよ。笑えるよ笑2.gif…ぇ…。

 

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あの珠緒という小林少年のような助手は一体何だったのかしら…。イマイチ存在意義がよく解らなかった。

もしかしたら、その辺のキャラクター使って続編でもやるつもりなんだろうか。笑.gif

ビデオデッキは我が家にもまだあるが、何だか懐かしいよね~。そして、かかってくる電話は、やっぱり家電話じゃなくてスマホなんだね。ここが平成(笑)

貞子とカーヤを戦わせたかったんだろうけれども、電話がかかるシーンを見て『着信アリ』とのコラボも面白いよね、と思ってしまった。ミミコちゃんはメジャーじゃないのか。笑.gif

ラストには本当にポカーーーーン…の後、笑いながら劇場を出たわ。

さだかや子が誕生しただけじゃんか!!

最初から、どちらかが圧倒的に強くて戦いにもならなかったら連れて行かれちゃうけどどうすんのとは思っていたけれども、まさか合体しちゃうとは(爆)

はい、お後がよろしいようで。

もうええわ


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『二重生活』満たされる方法

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二重生活

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監督: 岸善幸
キャスト: 門脇麦、長谷川博己、菅田将暉、河井青葉、篠原ゆき子、西田尚美、鳥丸せつこ、森本のぶ、岸井ゆきの、リリー・フランキー

公開: 2016年6月25日  観賞: 2016年6月22日(試写会)

主人公の行動は理解できず、共感も出来ない……
なのに、映画は終始主人公の目線。

見ている方も尾行を体験しているような気持ちに襲われる。
これは、とても、いけない事……。

◆あらすじ
大学院に通う25歳の珠(門脇麦)は、19歳のときに遭遇したある出来事をきっかけに長い間絶望のふちをさまよっていたが、最近ようやくその苦悩から解放された。彼女は一緒に住んでいる恋人卓也(菅田将暉)と、なるべくもめ事にならないよう、気を使いながら生活していた。あるとき、珠は恩師の篠原(リリー・フランキー)から修士論文の題材を提示され……。(シネマトゥデイより引用)

 

別に好きでもなく興味もない人を尾行したいと思ったことはないが、仕事や何かの事情でこんな事になったら、さぞドキドキするだろうとヒロインを見ながら息が詰まりそうになる。

見ながら、というよりもカメラが主人公の視点で動くので、いつの間にか入り込んでしまうのだ。

冒頭の若さ溢れる朝チュン後、ベランダから見下ろす幸せそうな親子の風景。

あ、私、このくらいの年齢の時はこんな子連れ夫婦に何の興味も示さなかったな、と何故か懐かしく思い出す。

大学へ行く、講義を覗く、論文の相談をする…。何だろう。全て疑似体験させられているように感じる。

つまり、とてもリアルだ。
岩代さんの静かな劇伴がジリジリと緊張感を高める。
 f:id:nakakuko:20160622052440p:plain


展開が全く読めず、どのセリフも全く予測できず、夢中で見た。

夢中で見ているから体感時間が早いかと言えばさにあらず、緊張感が持続しているので意外となかなか時間が過ぎていかない。逃げたいのに逃げ切れなかったり(笑)
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抑えた演出と共に物語をリアルに映し出す役者さんたちの演技。

菅田将暉は今回も素晴らしいが、とにかく、長谷川博己が私が見たかった長谷川博己だった。

ハセヒロを本気で怒らせたら怖いんだな、と思った。 あの冷たい目ね。精神的にジワジワ来る。
 f:id:nakakuko:20160622052542p:plain


試写会の後にゲストの評論トークショーがあって「長谷川博己のああいう感じにはゾクっとする、かっこいい、抱かれたい」的な事をおっしゃっていたけれども、本気でちゃんと見ていたのかな(笑)

あれは単なるセクシーどS男なんて演技では無かった。
侮蔑と嫌悪の目ね。あんな風に恐ろしい目で見られて責められたら、ただすくむよ。

最近のハセヒロは妙なテンションで叫ぶ役が多かったけれども、これは銃を持ったハセヒロよりも本気で恐い。こういう演技が見たかったから、とても嬉しい。嬉しいけれども…こんなに嫌われたらすごく悲しい。泣.gif

あそこでゾッとしてしまったのも、やはり視点がヒロインの目線になってしまっていたからなんだろうな、と。

それにしても門脇麦ってすごい女優だ。

たぶんその辺にいたら普通の人っぽいのに、濡れ場の色っぽさと開き直った時の墜ちっぷり。

『合葬』の時にも何てエロくておっかない女なんだと思ったんだよね。
朝ドラなんて出てる場合じゃない(笑)

菅田くん@卓也の存在がとても歯がゆくて…ああ、若さだからなのかな、とか。そういう所もまた上手い。

優しいけれども我慢もできないのよね。

  f:id:nakakuko:20160622052815p:plain


もの凄く寂しかった。

結局、珠はラストのあのシーンまで、どんな生活を送っていたのだろうか。

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人間の孤独を散々見せられた末の、あのラスト。

尾行して、覗いて、恐ろしくて寂しくて…。
体感する2時間。

 

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みんな秘密を持っていて、それを持つことで埋まらない何かを埋めている。

尾行する事で、次第に石坂の秘密を共有する気持ちになっていたらしい珠。

見ている方は本当にドキドキしたわ。
だって、所詮は素人。変装するわけじゃなく、そりゃ「あそこにもここにも居ただろ」とバレるよね。向こうは目ざとい敏腕編集者なんだから。

名前を呼ばれて追いかけられて、電話までかけて来られて、恐い軽蔑の目で見られて、あんなの相手がハセヒロだって逃げたくなるわ。

本来ならば教授も一緒に謝らなきゃいけないところ…。

ホテルのコンシェルジュには見られているし、ごみ収集のカメラも見ているし、違うサスペンスドラマだったらきっと犯罪に巻き込まれて冤罪かけられてる。怒.gif

ソフィ・カルの「哲学的・文学的尾行」は今一つ理解できず、したがって珠の論文がどれほど素晴らしいのかも今一つ理解できない。

けれども、きっと誰もがみんな他人の秘密に興味がある。それを覗く事で満足したいのだ。あの大家もそうだし。そして、恐らくこの課題を出した教授も。

自殺したように見えたけれども、ラストシーンであの指輪の手が映っているということは、教授は生きていて今は珠を尾行しているということよね。

卓也も同じ駅のカットに映っていたということは、今も近くに居るのよね。

そう思いたいだけかも知れないけれども、妄想かも知れないけれども、そういうラストに少し救われる。


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『葛城事件』親が一体なにをした

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葛城事件

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監督: 赤堀雅秋
キャスト: 三浦友和、南果歩、新井浩文、若葉竜也、田中麗奈、内田慈、伊藤正之、大方斐紗子、佐藤直子、黒田大輔、谷川昭一朗、児玉貴志、フェリ、古島裕敬、山野史人、名取幸政、津田真澄、かんのひとみ、市川しんぺー、田村泰二郎、五味多恵子、大滝寛、粕谷吉洋、石田圭祐、中野英樹、萩原利映、松本たけひろ、坂口進也、上杉二美、山像かおり、小柴亮太

公開: 2016年6月18日  観賞: 2016年6月22日

 

人間の一生はどうして一回きりなのだろう。
なぜやり直しが利かないのだろう。

こんなになるはずがないと思いながら作った「家族」。
正解が解らない…。

◆あらすじ
父親から受け継いだ小さな金物屋を懸命に切り盛りし、マイホームを手に入れ、妻の伸子(南果歩)と共に長男・保(新井浩文)と次男・稔(若葉竜也)を育て上げた葛城清(三浦友和)。理想の家族と生活を築いたと考えていた彼だったが、21歳になった稔が8人を殺傷する無差別殺人事件を起こして死刑囚になってしまう。自分の育て方に間違いがあったのかと清が自問自答する中、伸子は精神的に病んでしまい、保は勤めていた広告代理店を解雇される。やがて、稔と獄中結婚したという女・星野が現れ……。(シネマトゥデイより引用)

 

見終って、もう心からどんよりした。

自分の親とも自分の家族とも被る部分も確実にあって、自分自身も突き刺されている気がした。

この映画を見て「うちの家族は全然違う」「子育てが悪いからこういうことになるのよね」とキッパリ言える人は羨ましい。

こういう人に関わりたくない、とか、紙一重ですよね、とか他人事のように言える人も羨ましい。

私は笑ったわ。中華料理屋のシーン。

自己中心で自分語りのクレームをつける親、気まずいテーブル。

ウチの父親をモデルにした話なのかと思った(笑)何度あんな風に店員さんへ「すいませんね」の目配せをした事か。

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新築のシーンもウチの親を見ているようだった。

自分の建てた城をとても誇りに思っていた。最後まで自分の失敗に気づかず死んだ。ある意味、とても幸せな人。

そんな親の下で育った私でも、充分に稼いで豊かに暮らさせていただいた事に関しては感謝している。感謝しやがれと押し付けながら育てられても、そこは本当に感謝している。

だから葛城清にも同情できる。どんなに最悪な毒親でも。
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だって、家族なんてどう作れば「良いもの」になるの
誰だって鬼畜を育てようなんて思わずこうなるんだよ、きっと。

「毒親」「毒親」うるさい。親を責める若者たち。あるいは立派な中年層。

「こんな立派な子育てを私はしていますよ」の氾濫、素敵な子育て論と家族自慢。ネットが時々心からイヤになる。

けれども、親が育て上げた人格が子どもの一生を左右するのは確かだ。

子育ては本当に罪深くて恐ろしい苦行。

葛城清は一生懸命自分なりにやった。けれども、彼が作り出した「葛城家」という澱は家族全員を汚し続けた。

思い通りにならない人生。
葛城清の気持ちも、2人の息子たちの気持ちも、伸子の気持ちも何となく解ってしまう。

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でも、救ってはあげられない。
そして、やはり、関わりあいたくないよ。

だから、そんな私には星野はサッパリ理解できない人種だ。
ずっとイケ好かないと思いながら見ていたので、ラストの顛末はむしろ可笑しかったわ。

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わざわざ言う必要もないが、役者さんたちは皆さん本当に凄くて…もう、本当に凄くて息が詰まった。

特に、葛城清を演じた三浦友和の傲慢さと汚さとずるさと馬鹿さと哀れさには心の底から嫌悪感を覚えた。

凄い。凄い役者だ。

 

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長男は親父の夢である「パリッとしたスーツを着たビジネスマン」を捨てられなくて、会社をクビになった事を言い出せない。母親に可愛がられる弟を憎く思っても優等生の顔しか見せられない。

弟は家族全員から甘やかされて自分本位に育ち、腫物のように扱われて生きている実感を持てない。

母親は壊れていく息子たちに気づいても気づきたくない。壊れていく家庭と共に自分も壊れていくしかない。

父親は根源が自分だとは思っていない。だって、頑張って育てたはずなのだから。

行き場のない閉塞感と絶望を抱えながら毎日「出勤」する保の最期の笑顔。
新井浩文さんはこんな顔もするんだ…と思った。悲し過ぎて泣いた。


「人間の可能性を捨てたくない」とか「死刑制度に反対だ」とかいう理由で獄中結婚する「善良な」星野がラスト、清に襲われた時の顔ね。結局、偽善者なんじゃん。稔は救おうとしても清は救えないってか。

しかし稔は最期の面会で少しは自分自身を振り返る言葉を吐いたので…こんな女でも救いにはなったのかな。

刑が確定してから1年半の早さでサッサと死んでしまった稔。
少しでも生かして償わせたいという清の願いは叶わなかった。

そして、なかなか死ねず少しでも長く生きて償い続けるのは親である清の方だという皮肉。

息子たちがすくすく育つように植えた記念樹は首も括らせてくれなかった。

食べるシーンの多い映画だ。
最後まで食べ続ける。あまり美味しくもなさそうな物を。

それでも、生き続ける限り人は食べるのだ。


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『ヒメアノ~ル』背中を刺す意味

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ヒメアノ~ル

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監督: 吉田恵輔
キャスト: 森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ、駒木根隆介、山田真歩、大竹まこと

公開: 2016年5月28日  観賞: 2016年5月30日

 

タイトルが覚えられなくて(笑)

初めは「Hime・Noir」かと思っていた。
つまり、姫を中心とした暗黒世界なのかな、とか。

「Hime・Anole」なんだね。小さなトカゲ。すなわち、被捕食種。

◆あらすじ
普通の生活に焦燥感を抱くビル清掃会社のパートタイマー岡田(濱田岳)は、同僚からカフェの店員ユカ(佐津川愛美)との恋の橋渡し役を頼まれる。彼女が働くカフェへと足を運んだ岡田は、高校時代の同級生・森田(森田剛)と再会。ユカから森田につけ狙われ、ストーキングに悩まされていると相談された岡田は、森田がかつていじめられていたことを思い出し、不安になるが……。(シネマトゥデイより引用)

 

正直、途中までは何だか間が悪くて受け付けないと思っていた。

しかしその部分も今から思い返してみると不気味。
ムロツヨシが(笑)壊れたロボットみたいで(笑)

でも本当に壊れているのはそっちじゃない。

人を手にかける感触まで伝わりそうな森田剛の鬱々とした凄さ。

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こういう森田剛を見るのは久しぶりだな。
何をするか解らない恐ろしさ。『ランチの女王』を思い出す。
しかも、あの時よりも年齢と経験を重ねて、より恐さが増している。

今回は、バックボーンも辛いし…。

比較的ゆるい前半から、後半は鮮やかに色を変える。

後半には、まさかこのムロツヨシに……!!という展開が待っている。
序盤のリズムがイマイチ肌に合わない人も、そこは頑張って待とう。

タイトルバックの出し方、カッコ良い。

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優しくてズルい濱田くん@岡田の人間らしさ、本当は岡田くらいには普通に人生を送れるかも知れなかった森田の過去、1人の人間の人生どころか脳内を変えてしまう行為の残虐さ。

底辺を歩む人生をボーっと受け入れる層はまだ幸せだ。
そうなる人生を否応なく歩まされた者もいる。

サイコパス、ソシオパスを作る要因は家庭環境だけではないんだなって。
罪深いよね、本当に。
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だから最後はちょっと泣けてしまう。

ラストのセリフで呼ばれていた人は今どうしているんだろう。

脳内で色々補填した。


濱田くんがいつもの可愛いホンワカした癒しキャラではとても居られない内容。
それでも精一杯いつもの位置づけに就こうと頑張っているかに見える面白さ。

つまり。日常とは時に戦って勝ち取らなければならない物なのである。
誘惑もあるしね。
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佐津川さんも凄いな~。可愛い顔してチャレンジャーだなぁ、と思った。笑2.gif

99分という短い上映時間の中に、積み重なっていく暗い情熱を見た。

森田くんは決してキチガイじゃなかった。
そこら辺に居る、あなたたちが作ったかも知れない人。

 

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穏やかそうな笑顔で伏し目がちに話していたかと思えば、辻褄の合わないことをボソッと平気で口にする。

えっ、それ明らかに嘘でしょう…その違和感が付きまとう。

そんな森田が、声を荒げて岡田に反論するシーン。

俺もお前も人生終わってんだよ。
何も持ってない人間が底辺から抜け出すなんて出来るわけないだろ。

岡田の「底辺」は自ら歩んだものだ。
森田の「底辺」はそういう構造にさせられたゆえだ。

プライドも人格もズタズタにされる虐め。
森田くんの糸は学生時代に切れてしまったんだね。

サイコパスは先天性の要因が大きいとされ、後天性の人格異常は家庭内の暴力や性暴力で起きやすいらしい。

森田くんは、たぶん家庭に問題はなかった。
学校という社会が彼の人格を殺したの。

森田くんと友達だったのに虐めに売った岡田くん。

けれども、謝るシーンではサラッと「どうでもいい」とキレられた。

運転中に白い犬を轢きそうになったあの時まで、森田くんの脳はもうおかしくなっていたのだと、勝手にそう解釈した。

虐めに遭い続けたあの時から、ずっと。

被害者の背中をグサグサ刺し続けるのは、自分の背中が的にされていたからか…。

残虐な殺人暴力シーンよりも、虐め描写がキツかった。

初めての友達を家に呼んで、

お母さん!麦茶持ってきて!2つね!

無邪気にそう言っていた時が、この子にも確かにあったのに。

あの声と、あのちょっと甘えた口調と、あのシーンの優しい光を思い出すと涙が出る。

「お母さん」は、今、どこにいるんだろう。


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『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』アイスも食えるしスムージーも飲めるよ

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TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ

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監督: 宮藤官九郎
キャスト: 長瀬智也、神木隆之介、尾野真千子、森川葵、桐谷健太、清野菜名、古舘寛治、皆川猿時、シシド・カフカ、清、古田新太、宮沢りえ、坂井真紀、荒川良々、瑛蓮、みうらじゅん、Char、野村義男、ゴンゾー、マーティ・フリードマン、ROLLY、快速東京、木村充揮、関本大介、ジャスティス岩倉、烏丸せつこ、田口トモロヲ、片桐仁、平井理央、中村獅童


公開: 2016年6月25日  観賞: 2016年6月27日

 

宣伝でも流れていると思うし、そもそもこれが原因で上映延期になったのだからネタバレではないだろう…ということで書かせていただきますが、バス事故、リアルに出てきます

それを不謹慎だと思う方は初めから観に行かない事をお薦めしておきたい。

クドカン作品だからね…不謹慎と下ネタはある意味売り物だよ。マザファッカーーー!!

◆あらすじ
修学旅行で乗っていたバスが事故に遭ってしまった男子高校生・大助(神木隆之介)。ふと目を覚ますと、炎が渦を巻く中で人々が苦しめられている光景が目に飛び込んでくる。地獄に落ちたと理解するも、同級生のひろ美に思いを告げずに死んでしまったことに混乱する大助。そんな彼の前に、地獄農業高校軽音楽部顧問にしてロックバンドの地獄図(ヘルズ)のリーダーである赤鬼のキラーK(長瀬智也)が現れる。彼の指導と特訓のもと、地獄から現世に戻ろうと悪戦苦闘する大助だが……。(シネマトゥデイより引用)

 

まぁ~クドカン信者にとっては、ある意味、久々の祭りである。

それがミュージカル(?)なんだもの。…いゃ、ミュージカルでしょ。『真夜中の弥次さん喜多さん』以来、久々のミュージカルでしょ。

クドカンの作品にはいつも音楽が重要な位置を占めているわけだが、今回はロック…らしい。毎度、歌詞はクドカンが書いてます。汗.gif

「俺の右腕はカート・コバーン 左腕はジミヘン 下半身はマイケルジャクソン 声は忌野清志郎」

…ひどい。笑.gif

けれども、メロディに乗っちゃって長瀬のボーカルで流れちゃえば聞けるのだった。
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面白いと言っていいんだかよく解らないけど楽しかった。

主題歌以外はそれほど乗れないキーンキーンバンド、ぐらぐらするカメラワーク、まさに「地獄」だった。汗.gif

落ちる切っ掛けの不謹慎さといい適当なお下品さといい、まぁクドカンだなって。賛否両論でしょうね。それでいい。


それでも、クドカンは「死」を描き続けるんだな、と思う。
今回のストーリーには『弥次喜多』へと繋がる部分がたくさんあった。弥次さんが転生してここに居るんじゃないかと思ったくらいに。


「死」をこんな風に描いているのだから不快に思う人もいるだろう。
けれども、まぁ私は死後の世界がこんなだったら、それなりに楽しいかもね、と思うのだ。

クドカン的『地獄八景亡者戯』である。とても、いい。

役者さんはほぼ安定のクドカンファミリー。
長瀬や桐谷くんとのタッグは安定感ありすぎだし、神木くんも「11人もいる!」でお馴染み。
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大人計画の役者さんも当然のごとく出演…だが、猿時(爆)本当に最初気づかなかった。
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そして、閻魔大王は最後まで生瀬さんだと思い込んでいた!!
とにかく、みんなメイクが凄すぎて誰だか解らないよ。

中村獅童はEDで名前見つけてビックリして、家に帰ってからgoogleったくらい(笑)

役者さんを探しながら見るのも答え合わせみたいで楽しい。

長瀬も神木くんもサイコーだが特筆すべきは「ひろみちゃーーーん!!!」だろ。

もりりん可愛い!!だけで見れるほどの可愛さ。 そりゃ同じところに転生したいだろう。

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脳がぐらぐらする地獄のロックを体験して、現世でちょっと泣く…。そういう作品。
青春半ばで散った魂がこれだけ彷徨うというのも、切ないね。

 

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大助が地獄へ落ちた理由が「小のトイレを大で流した」とか「死神にあだ名を付けた」とか軽すぎでしょ…と思ったら、まさかの自分のせいでのバス事故とは~。汗.gifいやぁ。でも故意じゃなくても地獄行きと言うのはちょっと気の毒。

しかし、あの天国は、永遠だと考えるととても退屈そうだ。

けれども、私向けではあるかも知れない。テレビを見たり寝たりしてればいいんでしょ…死んでいるから寝っぱなしでも腰も痛くならなさそうだし(笑)笑.gif

「隣に居た人が突然居なくなる」

人生には確かにそういう体験をすることもあるかも知れない。

事故もそうだし、あとは突然の災難。例えば、震災。

「あまちゃん」からまた新たにクドカンは考え始めたのかも知れないね。その日その日を大切に生きること。隣に今いる人を大切にすること。


時間を超えて、ひろみちゃんとキス…いいシーンだった。ちょっと泣けた。

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「私も好き!」

ひろみちゃんの笑顔が輝くようだった。

触れ合える幸せは現世にしかない。「今」を大切に。
アイスクリームもスムージーも地獄にはないよ。


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『日本で一番悪い奴ら』坩堝に落ちる

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日本で一番悪い奴ら

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監督: 白石和彌
キャスト: 綾野剛、YOUNG DAIS、植野行雄、ピエール瀧、中村獅童、青木崇高、中村倫也、音尾琢真、矢吹春奈、瀧内公美、田中隆三、みのすけ、勝矢、斎藤歩、木下隆行、是近敦之、小林且弥、長田成哉、松岡依都美、白石糸、高阪剛、信太昌之、地曳豪、大西信満、椎名香織、美泉咲、佐久間真由、武田幸三、菊野克紀、宮本浩二、中村宙矢、島岡亮丞、末吉司弥、山田将之、野中隆光、山川就史、草野浩之、NARU、坂本あきら、市オオミヤ、大村明華織、シブリ、加藤貴宏、樋江井梓利沙、竜のり子、宮川連、高井尚樹、税所伊久磨、鈴木雅成、芝原啓城


公開: 2016年6月25日  観賞: 2016年6月29日

 

主題歌のスカパラ「道なき道、反骨の。」がテレビから流れて来るだけで、何とも言えない気持ちになる。

なぜか、それは郷愁感に近い。

それがどんなに酷いことでも、酷い結果になっても、仲間がいて一緒に何かに向かっていて盛り上がって…それって青春なんだよね。

◆あらすじ
柔道で鍛えた力を買われて、北海道警察の刑事になった諸星要一(綾野剛)。裏社会に入り込んでS(スパイ)をつくれという、敏腕刑事・村井の助言に従い、Sを率いて「正義の味方、悪を絶つ」の信念のもと規格外の捜査に乗り出す。こうして危険な捜査を続けていった諸星だったが……。(シネマトゥデイより引用)

 

『凶悪』の白石和彌監督。あれも実録事件を元にした作品だったが、これも同じく。

予告映像を見る限りではPOPなコメディっぽく映るかも知れないが、これはこれでなかなか苦い。

もちろん、笑える部分も多々あるが、笑いながらも口の中で砂を噛んでいる感覚。結果的には、やっぱり眉間にシワが寄る。だって、犯罪だもん。

『凶悪』は映画としては面白かったものの、実在の事件がただただ残酷になぞられている以上の物を得られなかった気がしていた。この監督はとても真面目な人なのだろうなぁと思った。

今回も「ああ。真面目な人なんだろうなぁ」と思いつつも、『凶悪』よりも遥かにエンタメしている。2時間越えの作品、中弛みなく楽しんだ。

この作品でニューヨーク・アジア映画祭、ライジング・スター賞に輝いた綾野剛のクズ演技は本当に素晴らしかった。

NHK朝ドラ『カーネーション』の周防さんで全国の奥様を虜にするまではクズ役がほとんどだった綾野剛。愛しの黒服星人である。やっぱり上手いね。惚れ惚れするわ。ハート2.gif
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クズと言っても、同情しようのないサイコパスではないんだもの。
「人間」なのだ。どうしようもなく。ここに誰でも陥るかもしれない坩堝がある。

人間、勢いに乗りすぎていると周りが見えず善悪すら解らなくなるらしい。
ポップな曲に乗ってエスカレートしていく犯罪。本人は間違っているとも思ってないのね。ある意味行き過ぎた「社畜」ってやつ。
嫌いな言葉だけど、ラストのこの人を見てまさにそれだと思った。
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綾野剛は元々大好きで注目しているので、そこはともかく。
太郎役のYOUNG DAISがとても良かった。
気づけばこの人を中心にストーリーを追っていた。

暴力に屈してとかではなく、心底「オヤジ」を慕うひたむきな姿勢に哀れみと愛しさを感じる。
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たぶん、この人が一番幸せだったと思うんだよ。数々の犯罪に手を染めつつも仲間を信頼して上へ上へと登っていた時期。

それは、見ている方からすれば明らかに奈落へ突き進んでいる道なのだけれども、本人にとってはきっと楽しかっただろうと思うんだ。
だから、この人の気持ちを考えると泣けてしまう。

笑いながらも緊張感と奈落への予感を常に感じ、恐怖に怯えつつ悲哀を楽しむ…POPなフィルム・ノワールである。

作品は元北海道警察警部・稲葉圭昭氏の手記をモチーフにしている。(稲葉事件 - Wikipedia)

だから、ラストのテロップに暗澹たる思いに襲われる。

こんな国でいいの日本……。

 

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スポーツ特待で道警へ入り、先輩から怒やされ、馬鹿にされ、尻を叩かれる。

警察官としてやる気はあるから、先輩のアドバイスに従って深く暗黒世界に足を踏み入れた。先輩に成り代わって裏社会との繋がりを仕切るようになるシーンへの一瞬の移り変わり。どんどん派手になっていく服。自信満々な歩き方。見事。

初めはそうなりたかったはずの「犯罪を倒し市民の安全のために努めること」

それは、いつしか「摘発の数を上げること」に替わってしまう。
どの企業でもある、目の前に見える数字を上げるという成績至上主義。

「銃の摘発」が海外から買ってきた銃の数になってしまうとは、ビックリだわ。しかも、それが個人の采配ではなくて警察公認の行いである事にビックリだわ。公の闇金なんて物が本当に存在するとはビックリ……。

中央と道警の数争い、より多くの数を上げるための裏工作、ヤクザも警察も手を携えての犯罪。これが犯罪摘発の実態なのだとしたら、市民の安全なんてどこにもない。

もちろん、一部が全部だとは言わないけれども、この件、このままでお終いなの信じられない。

『トガニ』のように、この作品が切っ掛けになって声が大きくなり正されるということはないのだろうか。

初めて麻薬に手を染める時の諸星の表情がリアルで凄い…それを打つ太郎の辛い表情も…。信頼が全部崩れたのはこの時。

テロップは公園で首を吊った上司も、拘置所で死んだ太郎も「死亡」と記している。「自殺」とは表記していない。自殺じゃない…きっと。

ヤクを持って逃げたという黒岩ももう生きてはいないだろう。

悪事の絶頂にあっても、4人で楽しかった頃の笑顔が懐かしい。

そう思いながら聞くEDに泣けた。


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『マジカル・ガール』まどかのように戦えってば…

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マジカル・ガール

~ MAGICAL GIRL ~ 

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監督: カルロス・ベルムト
キャスト: ホセ・サクリスタン、バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ、イスラエル・エレハルデ、ルシア・ポジャン、エリザベト・ヘラベルト、ミケル・インスア、テレサ・ソリア・ルアノ


公開: 2016年3月12日  観賞: 2016年4月13日

 

嫌ぁーーな気持ちと疑問をたくさん投げかけて、スパッと切り、えっえっ、どうして?という闇だけを残した作品である。

すっきり綺麗なハッピーエンドの魔女っ子を求める方にはお薦めしない。

もっとも、魔法少女ものって元々ちっとも綺麗なハッピーエンドなんかじゃない物が多い気がするんだけど。

不思議な力を駆使する者は最終的には天罰を受けるものなのである。たぶん。

◆あらすじ
失業中であるうえに、娘のアリシアが白血病で余命いくばくもないという過酷な状況に置かれているルイス。ある日、彼は日本製アニメ「魔法少女ユキコ」の大ファンである娘が、キャラクターのコスチュームを着て踊りたいと願っているのを知る。父親としてアリシアの望みをかなえるべく、高価なコスチュームを手に入れようと奔走するルイス。しかし、そんな彼の決意と行動が、元教師ダミアン(ホセ・サクリスタン)と心に闇を抱えている女性バルバラを巻き込み、悲愴な事件を招くことになる。(シネマトゥデイより引用)

 

 「サウルの息子」を観た時に入った予告が強烈で、公開したら絶対に行こうと思っていた。

額から血を流した変な女、短髪に魔女っ子コスの変な少女、誰が作ったんだかよく解らないアイドルソング(この時点ではまだ長山洋子のデビュー曲「春はSA-RASA-RA」とは知らなかった(笑))きっとすごく気持ち悪い映画に違いないと。
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しかし、予告から思い込んでいた印象と全く違って魔法少女はアレでキュゥべえはあっちかよみたいな……うん、たぶん理解してもらえない、これ(笑)

クライマックスで発動するかと思ったのにアレだし…あ、アレアレですいません。汗.gif

つまり、かなり現実的に仕上がった闇。
もっとファンタジーなのだと思っていた。

たぶん、あらすじを読んだ印象とも予告とも違うので、そういう方向に期待しない方がいい。

つまり…「ソレは」切っ掛けにしか過ぎないの。

面白かったけれども、多くの人にお薦めはしない。

あ、気持ち悪いに違いない…という予感だけは正しかった

映画の内容とは全く関係のない事だが、監督はこの作品を『魔法少女まどか☆マギカ』をモチーフにして作ったという話を小耳に挟み(聞いたのが観賞後で良かったわ)、えっ嘘でしょ?と言ってしまった。

本当にそういうインタビュー記事があってビックリ。


ごめんなさい、そこだけは、ちょっと納得できないわぁ…。
そんなに好きなら、そこはもっとちゃんと見てから語ってね。

少なくとも、まどかたちは私欲が発端だろうが世界のために戦っているんだからさ。「悲劇」である事だけで「まどマギ」と一緒にしないで(と、最終的にはこの映画と全く関係ないことでちょっと熱くカチンと来ている(笑))

そういう点では、ユキコの衣装がコスプレのように、この作品が日本の魔女っ子モチーフだという話もプレイに過ぎないのである。

だから、ソコに期待して観たらガッカリするので注意してくださいという事だけは申し上げておきたい。

つまり、魔法少女オタクのための映画ではないです。

ストーリーの軸としては、本当に極めて現実的なのである。
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上手く行かないものだよね。「運」ってやつ。

 

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予告の段階ではどういう内容だかサッパリ読めなかったので、きっと最終的には奇跡のように魔法が使えて病の少女がとりあえず悪に勝つのでは…と、甘い事を考えていた。

そういうファンタジーでは無かったのね。

ただ「魔法少女の姿形をしたい」という少女の夢を叶えたかった父が金のために女を恐喝し、金のために「トカゲ部屋」に入った女を守りたかった男が復讐を始め、まさか、病の少女までが殺されるとは思いもしなかった。


結果的には「女」というソウルジェムを使えたのは少女ではなくバルバラというキュゥべえだったのだ。
働かされたのは「魔法少女」ではなく、ダミアンという魔法おじさん。
病気の少女ユキコは魔女だった。

「まどマギ」風 f:id:nakakuko:20160707031147p:plain に解説してみましたが何か(笑)


現実世界では病気は治らず借金は嵩み、好きなものは手に入らず身体を売っても報われない。悪い事は悪い事を呼び、不幸は連鎖で膨れ上がる。

そんな救われない虚しい話。

ユキコには、まどかのように戦ってほしかった。


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『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』タイムさんの悲劇

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アリス・イン・ワンダーランド / 時間の旅

~ ALICE THROUGH THE LOOKING GLASS ~ 

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監督: ジェームズ・ボビン
キャスト: ジョニー・デップ、アン・ハサウェイ、ミア・ワシコウスカ、リス・エヴァンス、ヘレナ・ボナム=カーター、サシャ・バロン・コーエン、マット・ルーカス、レオ・ビル、ジェラルディン・ジェームズ、アンドリュー・スコット、リチャード・アーミティッジ、エド・スペリーアス、アラン・リックマン、ルイ・アシュボーン・サーキス、アメリア・クラウチ、レイラ・デ・メサ
公開: 2016年7月1日  観賞: 2016年7月6日

 

色彩豊かな世界は相変わらず美しい。
絵本から飛び出したような鮮やかな不思議世界、ちょっと狂ったファンタジー。

それに加えて今回は時間旅行というSF要素までがふんだんに盛り込まれる。物すごくお腹いっぱいになる童話。

ストーリーの方は…まぁ…ガッツリ整合性を求めなくていいよね。
だって、これは夢。アリスの夢ですもの…。

◆あらすじ
ワンダー号での3年に及ぶ船旅からロンドンに帰郷した後、青い蝶アブソレムにマッドハッター(ジョニー・デップ)のことを聞いたアリス(ミア・ワシコウスカ)。マッドハッターは、ワンダーランドで死んだ家族の帰りを待っていたのだ。ワンダーランドに着いたアリスは、白の女王(アン・ハサウェイ)たちから頼まれ、マッドハッターの家族をよみがえらせるべく、過去を変えようとする。時間の番人タイム(サシャ・バロン・コーエン)から時間をコントロールできる“クロノスフィア”を盗み、時間をさかのぼったアリスだったが……。(シネマトゥデイより引用)

 

ヒロインが前作よりより朝ドラヒロインみたいになってた。
意味わからないですかいいーんです。笑.gif
 
なんというか、まぁ…他人に迷惑かけつつ、色々解決すると全部主人公のおかげみたいになるところ(笑)
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けれども、ツッコみつつも楽しんだ。
そこ変じゃない→ほら、ワンダーランドだから!!
変だよね→夢だから!!!!の繰り返し(笑)

個人的には前作の終わりに、あまりにもそれは可哀想じゃね……と思っていたあの人が報われたからまぁいいかなって。

その代わりちょっと毒が抜けすぎたかなと。
品行方正過ぎる解決って気もする。

ティム・バートンが監督を下りたからこうなった…のでしょうね。

毒々しくも見えるカラフルさはそのままでも、キャラクターからはクレイジーな元気さが抜けてしまった。

前作の続編でも原作ありきでもなく、全方向に対して「イイ話」になった。もちろん、これはこれでいいのだろうけれども。

結果的には、親子の物語というよりも、「正しい親子の物語」。


しかし、ホントにこの作品のジョニーは白塗りジョニー史上一番原型がないよね。 実はちょっと似た人が代役やってましたって話でも気づかないかもしれない(笑)笑.gif

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「我らの友人アラン・リックマンに捧ぐ」に泣いた。

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「タイムは強敵だ!!」
って言うけど、そもそもタイムさんは敵じゃねーし…。怒.gif

むしろ、主人公サイドの方がひどいよね。泥棒して逃亡して乱暴して世界を破滅寸前に導いたんだから(笑)笑.gif

でも、いいの。これはアリスの妄想物語なのだから…。

「お茶の時間の1分前」で止められたはずなのに時間軸を未来に移動したらみんな普通に居るとか、パラレルワールド作りすぎ。で、でも、いいの、これはアリスの妄s…(略)汗.gif
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この妄想物語が行われている間、現実世界できっとアリスの時間が止まるほど辛いことが起きているんだよね。

けれども、最終的にはちゃんと理解するのだ。
「時間は止まらず残酷」なのではなく、「時間は止まらないから優しいのだ」という事を。

時間は大切な物を奪って行くだけではなく、思い出という過去と未来を与えてくれる事を。

アリス自身の母親に対する不満と反抗がワンダーランドでは赤の女王と白の女王の両親に対する葛藤となり、マッドハッタ―と家族との和解が自分の母親との和解に繋がるという…。妄想物語としては、とても面白いのだった。
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自分の頭の中にも孤独でいつも怒っている赤の女王や正義感溢れる顔して小ずるい白の女王や、頼れたり頼れなかったりするマッドハッタ―が住んでいるんだ。

と、考えれば今後の人生がちょっと楽しいかも知れない。

そう考えると、タイムさんはやっぱり敵かもね(笑)


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『死霊館 エンフィールド事件』実話ベースだけど恐くはないよね

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死霊館 エンフィールド事件

~ THE CONJURING 2 ~ 

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監督: ジェームズ・ワン
キャスト: ヴェラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン、フランシス・オコナー、マディソン・ウルフ、サイモン・マクバーニー、フランカ・ポテンテ、ローレン・エスポジート、ベンジャミン・ヘイ、パトリック・マコーリー、サイモン・デラニー、マリア・ドイル・ケネディ、ボニー・アーロンズ、スターリング・ジェリンズ
公開: 2016年7月9日  観賞: 2016年3月11日

 

アナベル人形
一応出て来るけど。チラッとな。
今から考えたら『アナベル』の方も「2」が出来るらしいから、そのためのゲスト出演だったのかも……ぃゃ、たぶん違う。怒.gif

とりあえず…そのテントはさっさと畳もうか。そんな絵も飾るのやめようか。
あんたらのやる事は理解できん(爆)
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◆あらすじ
ロンドン北部に位置するエンフィールドで、4人の子供とシングルマザーの家族は、正体不明の音やひとりでに動く家具が襲ってくるなど説明のつかない数々の現象に悩まされていた。助けを求められた心霊研究家のウォーレン夫妻(パトリック・ウィルソン、ヴェラ・ファーミガ)は、一家を苦しめる恐怖の元凶を探るため彼らの家に向かう。幾多の事件を解決に導いた夫妻ですら、その家の邪悪な闇に危機感を抱き……。(シネマトゥデイより引用)

 

 前作は途中で劇場を出たくなったほど恐かったので一応期待したのだが、今イチ。

自分はホラーに耐性ありすぎる方なので基準にはならないと思うけれども、やっぱりツボに入る部分も人によって違うわけで…。

私は首吊りツリーの映像にとても弱いので前作はそこで一気に持っていかれた感があったと思う。

そして、霊が宿る人形ね。

あれも大嫌いなので冒頭から恐かった。つまり前作は個人的にストライクするものが多く、今作はほぼ引っかかる所が無かったということかも。

けれども、こう書いていて思うのは、前作は引っかかるパターンが2時間の中にたくさん詰まっていたよな~と。

今回は驚かせるパターンが同じで、途中で眠気すらきた(笑)
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ただ霊が出てきてこんにちわ、悪魔が出てきてブワァァってのを繰り返されてもね…。お化け屋敷もいつも同じところから同じようにお化けが出てくりゃ売上げ無くなるよね。笑.gif

孤独な少女の物語としてはベタだけれどもちょっとウルっときてしまう部分もあった。

でも、それはホラーに特に要求しない(笑)

どうせなら家族の物語としてもう少し姉弟のキャラを濃くしてあげれば良かったのに。ウォーミングファミリー物語としても失敗している気がする。

少女が戦う物語にもなりきっていないし、とにかく…とにかく長い 。

ラストの実在のテープと映像が一番怖かった。

一番の収穫はエドとロレインの娘・娘ジュディ・ウォーレン役のスターリング・ジェリンズちゃんがめっさ美少女になっていた事。ハート2.gif
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出番はほんのちょっとだけど。

この事件は、世界が霊の存在を初めて認めた実在の事件だということ。

調査員による数ヶ月の調査中に発生した怪現象の記録だけで1500を超えており、発生総数となると不明。このポルターガイストの活動は、多くの者によって目撃され証言されており、家族以外にも、調査員、警察、報道関係者が含まれる。そして、録音テープや写真やフィルム(動画)で記録されている。調査員のモリス・グロスが述べたように、でっちあげなどありえないほどの この量の多さこそが、この事例に最も説得力を与えている。

 

と書かれたwikipediaのページを読む方がこの映画を見るよりも恐かったりして……。

エンフィールドのポルターガイスト - Wikipedia

 

 

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エドが突き刺されて死ぬイメージをロレインが見るたびに、そうそう、そうやって死んでしまった夫を黄泉の国から連れ戻すんですよね…と、ついつい思ってしまった。

同じジェームズ・ワン監督で同じパトリック・ウィルソン…『インシディアス』と、とても被る。笑.gif

そう。危機一髪で助かったり、芝居だったり、やはり起こる出来事が家がドタバタしているって以外に大して恐くないのだった。

とにかく…
悪魔のせいで成仏できなかったおじいさんは家族の元に行けて良かったね、って、そういう話でした。


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『ターザン REBORN』大人のジャングル・ブック

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ターザン:REBORN

~ THE LEGEND OF TARZAN ~ 

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監督: デヴィッド・イェーツ
キャスト: アレクサンダー・スカルスガルド、マーゴット・ロビー、サミュエル・L・ジャクソン、クリストフ・ヴァルツ
公開: 2016年7月30日  観賞: 2016年7月14日(試写会)

 

『レヴェナント』の時には熊が恐ろしかったわけだが、こっちではゴリラ恐ぇぇぇぇ……となるわけである。

あーー…あんな風に叩かれたら全身の骨が一度で砕けるわ…動物恐い。自然恐い。泣.gif

けれども、結果的には人間の方がずっと狡猾で恐ろしいのだった。

◆あらすじ
生後間もなく国の反乱が原因で、コンゴのジャングルで動物たちに育てられた英国貴族ターザン(アレキサンダー・スカルスガルド)は、美しい妻ジェーン(マーゴット・ロビー)とロンドンで生活していた。ある日、政府の命令で故郷へ戻るがそれは巧妙なわなで、ジャングルを侵略された上に、妻がさらわれてしまう。愛する妻と故郷を取り戻すべく、ターザンは内なる野性を呼び覚まして戦うことを決意する。(シネマトゥデイより引用)

 

2D観賞。

「大自然」とか言っちゃうのが軽く感じられるくらいのワイルドワイドなジャングル風景の中で繰り広げられる、迫力満点のアクションにただ見入る。

お話としては単純明快。
攫われたお姫様を助けるために戦うジャングルの男。

よくあるヤツですね、と言われたら身も蓋もないが、これが意外と飽きないのよ。

英国では貴族というセレブな地位にあり、ジャングルに戻ればライオンもゴリラも幼馴染み。

元々コンゴで暮らしていた明るく美しい妻・ジェーンも走るし戦うし、非常に好ましい女。

2人のラブラブシーンも動物がじゃれ合っているように自然で美しいんだよね。そして色っぽい。

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この妻だったら攫われたら助けなきゃって思うだろ…うん。納得のキャラクターをマーゴット・ロビーが好演。

ターザンが故郷へ戻る切っ掛けとなったジョージの振り回されっぷりも面白い。(もちろん、振り回されてるだけじゃなくて、かなり活躍します)

ジャングル押し通るところは、もう…伊賀越えかって……
ううん、『真田丸』をご覧になっていない方にはピンと来ないネタで、どーも…。笑.gif

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アメリカ南北戦争からヨーロッパにおける奴隷貿易問題までモリモリ盛り込みつつ、自然を維持し動物と共存するということを考える。

そういう部分が深く深く描かれているわけではないが、アクションすげーーーとボーーっとしつつもそういう所に想い馳せられる作りにはなっている。

まぁ、難しい映画ではないので、とにかくジャングル冒険を楽しもう。

ゴリラ恐ぇぇ、ワニ恐ぇぇ…と思いつつ、ジャングルを走り回っている内にいつの間にか気分はもう動物たちの味方。

早く死んで下さいと願うのは人間ばかりという。鬼畜だわ。人間。

『ジャングル・ブック』の実写版も公開されるということで混同されている筋も多そうだけれども(笑)こっちは筋肉隆々のイケメンなので全く違います。(そういう問題か)

ラストのあのシーンでは思わず、このダンナが欲しいと女性はみんなポワーっとなる!!…かも知れない。 たぶん(笑)

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悪役がキッチリ描かれているのも好感度高い。

最初に出て来た時には全く強そうに見えなかったのに、あの十字架ぐるっと攻撃には驚いたわ。仕事人か!!

こんな話なのだから主人公が殺されちゃうわけないのだが、クライマックスは文字通り手に汗握ったよ。

思わずワニに向かって「早く!早く!」と叫んでしまいそうになったぞ。(実際、本当に口が開いちまった笑.gif)

あの、グルーーッと旋回してジェーンを助けるシーンではポワワワとなったし、作り手の思惑通りにハラハラしたりウキウキする良い観客…わし。笑.gif

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結局、あのまま夫妻はコンゴに住み続けるのだろうか。貴族なのに英国に戻らなくて女王様に怒られないだろうか。…と、ちょっと心配する。

まぁ、あの人たちにとっては貴族社会は窮屈そう。
きっとアフリカで幸せに…そして続編へと……続きそう。笑.gif


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